ビジネスマンであれば、誰でも一度は自著の本を出版するという夢を持ったことがあると思います。

本を出版するメリットには、


(1) その道の専門家と認知され社会的信頼度が向上する

(2) 取材やセミナー講師の依頼が増えるため良質な引き合いが増える

(3) 頭の中の暗黙知が形式知化されるため知識が体系化される

(4) 印税が入る

(5) 親孝行になる

 

など、5つのメリットがあります。

 

私も、共著を含めいままで9冊の本を出版しましたが、上記5つのメリットを享受してきました。

一つひとつ見てみましょう。

 


(1) その道の専門家として認知され社会的信頼度が向上する

これは言わずもがな、でしょう。本の出版というのは(広告ではなく)PRに似ています。なぜ人は広告よりも新聞やニュースサイトの記事を信じるのか。それは、その記事は(記事の当事者ではなく)第三者のメディアによって選定されて出ているからです。

本を書く、出版社から本を出すということは、誰でもできることではありません。だからこそ、そこに価値が出るのです。この人はその道の専門家と出版社が認めたんだな、というお墨付きが付いてくるわけです。ここが電子書籍(のみでの)出版と一番大きく異なるところでしょう。

 


(2) 取材やセミナー講師の依頼が増えるため良質な引き合いが増える

PRの世界には、「メディアを一番見ているのはメディアの人間である」という言葉があります。わかりやすく言えば、新聞に取り上げられるとテレビから取材が来る、ということです。この法則は、「本を一番読んでいるのは、メディアの記者やセミナー事務局である」にも当てはまります。

記者が誰か専門家の意見を探しているときや、日経や宣伝会議など、多くの教育講座(セミナー)を運営している担当者が次のテーマ(講師)を探すとき、よく書店に行きます。誰がこの道のプロか、自分のイメージに近い論を唱えている人は誰か、探しているのです。

本を出版すれば、間違いなくこれらの人の目に留まる可能性が向上し、取材、メディアへの寄稿、セミナー講師の依頼が増加します。セミナー講師が増えれば、間違いなく良質な仕事の引き合いは増加するでしょう。

 


(3) 頭の中の暗黙知が形式知化されるため知識が体系化される

本を書くことの副次的なメリットに「知識の体系化が進む」ことが挙げられます。数万字の文章を書いていくと、何度も「あれ、ここロジックが合わないな」とか「あ、ここ結構曖昧だな」というところが浮き彫りになってきます。頭の中ではある程度まとまっていると考えていたものでも、文章に落とそうとすると途端に筆が進まなくなります。

これ、PPTでチャートばかり作ってると以外と見過ごされてしまうのですが、文章だとごまかせないんです。私たちの頭の中は、以外と曖昧な暗黙知で満たされていて、普段は何となくそれでやり過ごせるんですけど、文章に落とそうとすると完全に形式知化されてないと書けないんですよね。ですから、一般的なビジネス書の文字数である10万字という文字量を書くことによって、頭の中に入っていたモヤモヤの暗黙知が、全て理路整然と綺麗に体系化されていくのです。

これは以外と大きなメリットなんです。だから、本を書いた後のセミナーは評判が良いはずです。何しろ、頭の中がスッキリと形式知化されてるんですから、聴いてる方もわかりやすいわけです。このメリットは3,000字~5,000字程度のブログ記事でも得ることができますが、是非一冊の本を書く過程で大きな効果を実感して頂きたいポイントです。

 


(4) 印税が入る

本を出すと、よく「イヨッ!夢の印税生活だね!おごって!」と言われますが、ビジネス書の印税なんてたかが知れています(それでも一応一定額が入るのでメリットに入れましたが、休日出勤のご褒美みたいなものです)。

全ての人が読者ターゲットになる小説や、ビジネス書の中でも自己啓発本などはターゲットが広いため、ベストセラーになると数万部、数十万部、なんて数字が出ることもありますが、広告やPR、マーケティングなどは10万部も売れたら超ベストセラーの類です。

広告、PR、マーケティング業界で読んでない人はいないとも言われる、さとなおこと佐藤尚之さん著の超ベスト&ロングセラー『明日の広告』(アスキー新書)でも、たぶん10万部くらいです。

ちなみに、結構売れた『ソーシャルメディアマーケター美咲』(翔泳社)も、刷数は1万数千部です。

わかりやすく1万部で計算してみましょう。一般的に、著者が受け取る印税は定価の7~10%です。

美咲定価1,500円×10,000部×10%=1,500,000円

この金額を全額もらえるわけではありません。初版保証率や源泉徴収など様々なものが引かれます。また、ビジネス書の初版は3,000部~5,000部程度です。

最近では重版がかかれば大成功なんて言われますから、ほとんどが重版されず、初版分も全部売れません。その場合、出版社によって「定価×初版部数×印税率×初版保証率80%」(売れても売れなくても80%の印税は最初にくれる)場合と、売れた分だけ3ヶ月に1回程度締めて支払ってくれる場合などに分かれます。

まあややこしいですが、印税目当てで本を出版してもたかが知れてますから、ビジネス書の出版はそれ以外のメリットを目標にすると良いと思います。

 


(5) 親孝行になる

いきなりぜんぜん違う視点になりますが、実はこれが一番大きいんじゃないかと思います。本を出版したとき、一番喜んでくれたのは両親です。「うちの子が本を出版した!」「トンビが鷹を産んだ!」と大騒ぎとなり、近くの本屋で大量に予約購入し、親戚中に配り回るなど大変な騒ぎとなりました。いままでたいした親孝行をすることができていなかった私にとって、本の出版を喜んでくれている親の顔を見れたことが何よりも嬉しかった。

子どもを持つ親であれば、親孝行だけでなく、息子や娘の親として、パパは・ママは本を出したことがある尊敬できる人として認識されるメリットもあると思います。子どもはそんな親の背中を見て、きっとすくすく育ってくれるでしょう!

以上が5つのメリットです。

 

ここからは、「本は出版したいけど、無名な自分の本を出版してくれる出版社を見つけるなんて難しいし、何から始めたら良いかわからないよ!」という方のために、出版に向けた具体的な方法を(あくまで私の独断と偏見ですが)書いておきます。

 


● 無名な人間が本を出版するためにやるべきこと(一例)

私が最初の本『独立コンサルタントでメシを食う技術』(同文舘出版)を出したのは2004年のこと。30歳のときです。

当時は独立したての駆け出しマーケティングコンサルタントで、何の実績もなければ誰も私のことなんて知りません。独立したてですから、有名な会社に勤め要職に就いているなどの金看板もなければ、単独でのセミナー講師も務めたことなんてありませんでした。

だからこそ、「成り上がるために本を出版してセルフブランディングしよう!」と無邪気に考えていたわけです。でも、そんな無名な若者に出版社から執筆の依頼なんて来るわけがありません。どうしたら良いのかわからなかったので、とりあえず本の出版に関わる下記の本を読みました。

 


※新版出てます

 

この中で一番参考になったのが『ビジネスマンは、本を書こう』(畑田洋行著)です。本が出版されるまでの流れや書籍企画書なるものの存在、その書き方まで具体的にまとめられており、ものすごく参考になりました。

その本をたよりに出版企画書と当時のプロフィール、少しばかりの実績などを資料にまとめ、次に私がしたことは出版社リストの作成。本というのは、出版できさえすれば良いものではありません。どの出版社から本が出るかによって本の重み(重量ではない)や書店での配本力が変わってきます。

そのため、「ここから出るといいなぁ」と思える出版社を30社程度リストにまとめ、その全てに書類を送ったのです。もちろん突然。担当編集者名がわかることは少ないので、ほとんどが「ビジネス書編集担当者様」宛て。

ただし、出版社に持ち込まれる書籍企画書は毎日数十件とも言われます。ただ送っただけではすぐにうず高く積まれた他の企画書の1つになってしまいます。そのため、門前払いを食らうことを覚悟の上、一件一件電話をかけ、企画書が届いたかどうかを確認し、ぜひ一度目を通してほしい旨を伝えました

そこから待つこと2週間。なんと3社から「一度会って話を聴きたい」とレスポンスを頂けました。そのうちの一社が同文舘出版さんだったわけです。企画書を見てくれた編集者の方はとても熱い方で、本の書き方を一から教えてくださいました。凄まじく厳しい方でしたけれど、当時頂いたアドバイスはいまでも一生の宝物です。

とまぁ僕も当時はゲリラ的なやり方で何とか本の出版に漕ぎ着けたわけです。一冊本を出版すると、書籍編集者の方から「この人は10万字程度の文章を体系立って書ける人」と認識されるため、次の本の出版が決まりやすくなります。

そのため、この業界に来て一番最初に『キズナのマーケティング』(アスキー新書)を出版するときは(頼れるご紹介者を一人介したことも大きかったですが)比較的スムーズに出版に漕ぎ着けることができました。あとは流れに身を任せ…的な感じです。

 


● 商業出版以外の選択肢

本の出版には、出版社から普通に出版してもらう商業出版のほかに、自費出版と電子書籍出版という方法があります。ここでは長く書きませんが、自費出版は先に挙げた5つのメリットがほとんど享受できません。何しろ自費出版ですから。

次にAmazon Kindleなどでの電子書籍ですが、最初の本の場合、個人的にはあまりお勧めしません。よほど現在の社会的知名度が高い人なら別ですが、ほとんどの場合、出版したことを広く世に知らしめることができません

そして何よりも一番大きいのは、担当編集者が横を並走してくれないことです。編集者はその道のプロです。本の目次構成、ストーリー構成、読みやすさ、タイトルの付け方、装丁など、ありとあらゆるアドバイスをくれます。その他として大きいのはモチベーションマネジメントです。

書いてみるとわかりますが、ビジネス書一冊の平均文字数は約10万字程度です。ブログで3,000~4,000字の記事を書くのはさほど骨が折れるものではありませんが、これを一冊の本として成立する全体構成の中、10万字という分量を書き上げるというのは相当な生みの苦しみをともないます。仕事をしていれば平日夜か週末に書くしかありません。

最初にあった高いモチベーションはどこかに行ってしまい、ときに「もう無理!」と泣きごとのひとつも言いたくなります。そんなとき叱咤激励してくれるのが編集者です。もちろん、優しい言葉だけじゃなく(同文舘の熱い編集者の方は初稿の第一稿を読み)「なにこれぜんぜんつまらない。あのね、誰もあなたの自慢話なんて聴きたくないの。全部書き直し!」と超スパルタでしごかれることもありましたが…。

話が飛びましたが、個人的には「良い本の影には敏腕編集者あり」だと思っています。私がいままで出した本は、それぞれの敏腕編集者なくしては絶対に世に出すことはできなかったと断言できます。ぜひ、体当たりで出版社を見つけ、編集者とタッグを組み、一冊の本を世に生み出してください。

長くなりましたが、如何だったでしょうか。私は運に恵まれ、10年前には考えることもできなかったほど本を出すことができました。本を出したことによる縁は次の縁を生み、出版だけでなく、多くの魅力的な方々との出会いにもつながっています。ぜひ皆さんにも、この素適な世界を知って頂きたい。

 

最後に、本を出版したいと考えている全ての人にこのメッセージを送ります。

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